まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 わかっている。わかっているんだけど。いきなり目の前に現れた美男たちの対応に頭がまわらない。

「おい、風呂今入れているから、用意出来たら……なんだ?」

 ガラっと引き戸を開ける音がして、さっき私たちから離れて行った黒髪の彼が私たちの様子がおかしいと判断してか訝しげに入って来た。

 黒髪の彼は、がっちりとした体躯に短い髪、鋭い目が印象的だ。この人も二人の例に違わず整って精悍な顔付きをしている。少し怖いとも思えるワルっぽい印象だけど、そこがまたなんとも魅力的に見えた。

「雄吾。彼女、固まっちゃったんだ。俺たち、何かおかしいことしたかな?」

「……この短い間に何があったんだ?」

「僕が、挨拶と自己紹介しただけだ。他には特には何も」

 三人は揃って戸惑ったように、さっきまで驚きに頭の回らなかった私を見つめている。全員の視線が集まるのを感じて顔がカッと熱くなった。

 この状況で何も言えずに、黙っている場合じゃない。

「あの、ごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃって。私は透子。梶原透子です……一晩だけ、お世話になります」

 そう口早に言って、私はぺこりと頭を下げた。



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