まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 疑問を逆に聞き返された。私は理人さんの表情を失くした綺麗な顔を見た。いつもの無表情とは全然違う。まさに氷のような、と形容してもおかしくない程。殴られたところを除けば、美しすぎる彫刻のような顔だ。

「まずお風呂に入ってからです。あと、手当てしてから」

「……そうしたら、僕と一緒に居てくれますか?」

「はい。もちろん。理人さんが嫌と言うまで」

「約束ですよ」

 彼はもう一度ぎゅっと私を抱きしめると、浴室の方向に向かって歩き出した。私は理人さんの着替えと救急箱の準備をしに、リビングへと向かった。

「どうだった?」

 私が戻ったら、春くんがひょこっと顔を出す。心配そうで眉が寄っていて、大きな口もへの字になってる。

「誰かに……殴られているみたい。何か冷やすものと、救急箱ある?」

「もちろん。ちょっと待ってて」

 春くんはサッと身を翻して、手際良く必要なものを用意してくれる。私はその間に、理人さんの着替えだ。

「理人さん、着替え置いておきますね」

 私は、脱衣所で声をかけた。浴室からは、断続的にシャワーの音がする。

「……透子さん」

「はい。なんでしょう」

「すみません。僕濡れていたのに、抱きしめてしまいました。今更ですけど、濡れてませんか?」

 理人さんは少しは正気に戻って来ているのだろうか、なんだか声が恥ずかしそうだ。

「ふふ。タオルごとだったので、大丈夫ですよ。私、自分の部屋に居ますので。怪我の手当てしますから後で来てくださいね」

「……わかりました」

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