まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 無駄な肉など全くない。それでいて、必要なところにはきちんとついている筋肉。もちろん、お腹は薄く割れている。

「触って貰えます?」

 彼は色気のある挑戦的な目で、私を見た。こくり、と喉を鳴らして、私は手を持ち上げた。

 勇気を出して、自分から彼の腕を触ると硬くて柔らかだ。そんな相反する表現が、相応しいと思う。冷たくて温かい、不思議な感触。

「寒くないですか?」

 さっきまで、雨に打たれてずぶ濡れだった人だ。シャワーを浴びたとは言え、風邪をひいてしまうかもしれない。

「透子さんが、温めてくれるんですよね」

 理人さんは、軽く手を広げてから私を見た。そう言えば、そんな話をしていた。

「うー、はい」

「嫌ですか?」

「嫌じゃないです……けど、」

 理人さんの薄い透明のグレーの目が、面白そうにして瞬く。

「どうしたんですか?」

「恥ずかしい、です」

「大丈夫です。僕も恥ずかしいです。同じですね」

 全然、大丈夫じゃない。けど、こうしていても時間は過ぎるばかり。

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