まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 彼は慌てた様子で、驚いた声を出す。被っていた黒いフードを、押さえた。

「理人さん?」

 彼の顔が一瞬見えた私は、声が浮き立つのを抑えられない。駆け寄って腕を掴もうとするけど、やんわりと手を押し戻された。

「じゃないんだけど、どうかガッカリしないでくれよ。せっかくここまで、助けに来たんだから」

 振り返って、理人さんそっくりの彼は笑った。ただし、彼はこげ茶色の髪だ。

「誰?」

 彼は私から視線を猫に戻すと、うんざりした様子でつぶやいた。

「猫又か。夢に干渉出来るなんて、古びた妖怪のくせに強い力だ。透子ちゃん、悪いけど僕の傍を離れないでくれ」

 手に取ったままの私の手を、彼の黒いパーカーの裾を握らせた。大きくて、少し冷たい手。

「人間風情が……やたらと、知恵をつけたものだ」

「それはどうも。でもここは、俺の庭みたいなものだから」

「だから、勝てるとでも?」

 背中にゾワリと寒気がして、尻尾の黒い影が一層大きく濃くなった。

「試してみても良いけど、なんだか、とどめを刺すのは面倒そうだな。ただ、俺には絶対に追いつけないよ。猫又」

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