まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 春くんは半身を起こそうとしていた私を、被っていた毛布ごと抱きしめた。鳥の巣みたいなくしゃくしゃの髪が、私の鼻をくすぐる。ふわっとしたマシュマロみたいな、柔らかな抱擁。

「このまま、目が覚めないかと思った……あいつ、こんなことして、思い知らせてやる……」

 間近にある可愛い顔を無表情にして、春くんは呟いた。

「……兄さんに、会えましたか?」

 理人さんは、私の頭を撫でながら言った。彫刻みたいな完璧な美しい顔の無表情なのに、泣きそうに見えるのは錯覚なんだろうか。

 さっき夢の中で助けてもらった太陽のような笑顔の人とは、全然違う。顔は似ているけど、静かな月のようなこの人が私の夫なんだ。

「はい。助けてもらいました。お名前も聞けずで、申し訳なかったですけど」

「……兄らしいですね。何が、ありました?」

 私は夢の中であったことを、掻い摘んで話した。

 大きな二足歩行の猫の妖怪、猫又のこと。猫又に殺されかけたこと。理人さんに、良く似た男性に助けてもらったこと。もちろん、自分の甘い夢の中でのことは、恥ずかしいし内緒だ。

「あいつ。猫飼ってたっけ」

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