まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

 頭を抱える雄吾さんをよそに、私は黙ったままの理人さんに手を引かれて階段を上がる。

「良いんでしょうか?」

「大丈夫でしょう。気にしなくて良いです。そんなものですよ」

「……えっと、理人さん。あのどうなりました?」

「ああ、終わりました。もう貴女に手出しすることは、絶対にないと思います」

 その時の理人さんはさらっと言ったんだけど、振り返った時にグレーの目には底冷えするような怒りが見えて、少しだけ怖かった。彼が私に危害を加える訳ないって、わかっていても。

「理人。俺ちょっと買い物で外出してきたいんだけど、透子頼める?」

 春くんが、階段の下から声を掛けてきた。脱いでいたお洒落なジャケットも、いつの間にかちゃんと着ているし、車の鍵を出して出掛ける準備万端だ。

「……早く戻れ」

「わかってるって。行ってくるねー。透子」

「いってらっしゃい」

 理人さんに手を引かれながら、私は手を振る春くんに挨拶を返す。

 強く引かれる手が、ちょっと痛い。いつも優しくて優しすぎるくらいなのに、理人さんがどれだけこれまで心配したかを表しているようで、なんだか何も言えなかった。

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