まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
「雄は自分が料理するのが、この国では通常だからね。向こうでは違うんだよね? でも、まさか人間の女の子に食べさせてあげられるなんて、全然思わなかったから、普通の食事だけど。もし、知ってたら、もっともっと豪華なのを用意してたよ」

 彼の話を聞きながら食事を食べ進める私を見つつ、春くんはしみじみとした様子で言った。

「食事の用意や身の回りの世話も、雄の役目だから何も気にせずに……」

「春、もう良い。お前は部屋に戻ってろ」

 テレビを観ていたはずの、理人さんの冷静な声が届く。対して春くんは口を尖らせて不満そうにえーっと言った。

「なんで。良いじゃん別に」

「この世界の状況を、彼女に伝えるのは、僕たちじゃない。お前もわかっているだろう?」

「……わかった。もう言わない。ごめんなさい。でも透子ともう少し一緒に居たい。どうせ明日にはもう会えなくなるんだし」

 しゅんとして項垂れた春くんに、理人さんは軽くため息をついた。

「……発言には気をつけろ」

 彼にそう言いおくと、動かなかった雄吾さんと同じようにテレビに目を移した。私もつられるようにテレビ画面をふっと観ると、テロップには日本語が並んでる。政治家の誰だかの汚職のニュースが流れていた。

 ……本当に、ここは日本じゃないの?

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