まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
「理人の匂いがついていたら、ほとんどの雄は手出しできないと考えてくれて良い。本能で強さが測れるくらいでないと人狼の世界では生きていけないからな。だが、複数の夫を持つのはこの日本では義務だ。そこは、もう我慢してもらうしかないが……」

「あの」

 私は頭を優しく撫でるように拭いていたその手を、取った。大きくて温かな優しい手。私の、夫の手だ。

「……なんだ?」

「私。我慢、してないです。三人を選んだのは私だから、皆が嫌じゃなかったら、私は」

 言葉に詰まった。自分から、そういうこと言うのはやっぱり抵抗があるからだ。

「……透子、わかった。もう、何も言わなくても良い」

 ぽんぽんと、宥めるようにタオルの上から頭を優しく叩かれる。

「俺達が、俺が嫌なわけ、ないだろ?」

「雄吾さん……」

「ただ、無理だけはしないでくれ。透子の覚悟が決まるまでいつまででも待てる。それが、伝えたかったんだ」

「……ありがとうございます」

「……もう、行くよ。おやすみ、透子」

 照れくさそうな顔はやっぱり逸らされていたけど、その大きな手で水気の取れた前髪をくしゃっと撫でた。


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