まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 飛鳥さんの言葉を聞いて理解して、息が詰まった。それは、当たり前のことだ。こんな現代社会で働けずにお金もなければ、何も買えない。ということは、生きていけない。

「この日本では雄が中心で、働き動いています。貴女がその中で働き、生きていく糧を得ることは難しいでしょう」

 確かに十人に一人の割合になってしまえば、そんな貴重な女性を働かせないかもしれない……。

「そんな……」

 逃げようにも逃げられない現実に呆然をした私に、追い打ちをかけるように飛鳥さんはあっさりと言った。

「……この建物に貴女の私室を用意します。警備は厳重にはしますが……先ほど情報を公開したので、近い内に貴女の夫候補へ名乗りを上げる者が、この里を目指して集まるでしょう。どうか、それまでに気持ちを落ち着けて、自分の夫を選ばれてください」

 飛鳥さんは、何も言わないままに頷いた私に、気遣うような視線を向けた後で一礼すると出ていった。

 多数の夫を選ばなければ生きていけない世界。頭がガンガンして、色んな出来事、今聞いた情報なんかが、頭の中をぐるぐると回って回って。

 どうしようもなく、やり場のない怒りや悲しみ、そんなものが体中に渦巻いていた。

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