まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 私の頭は、突然のもたらされた情報に処理が追いつかずショートしてしまったかのようになった。震える唇からは、小さな声で同じ言葉しか出ない。

「貴女が元居た国は日本という名前だと思うが、この国の名前も日本だ。ただ、住んでいる種族は、僕たちのような人狼。君と同じような人間はほんの少しの人数しか日本には存在していない。そして、今居るこの山の中は君のようなか弱い人間が、一晩を過ごすことの出来る場所ではない。貴女は僕らにとって保護しなければならない存在です。だから、今から僕達と一緒に着いて来て貰えますか?」

「さっすが、理人。わかりやすくて話が早いねえ」

「おい、春、黙れ」

 明るい声の右側の人が、低い声の左側の人に怒られた。けれど、特に怒られた側の右の人は悪びれた様子もなく肩を竦めた。

「え? えっと。わかりました」

 保護してくれるというなら、願ってもない。

 こんな山の中に居ても良いことは何もなさそう。そして、この人たちは何故か、私がここにいる事を当たり前のようにしている。異世界から来たということを知っているのに、それを驚いていないみたいだ。

 そうして保護してくれるという三人組の申し出に、断る理由もなく、私は付いていくことにした。

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