まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

002 巣の中

 夜に輝く満月の薄明かりの中、背の高い二人が森の中を先導して、後のもう一人が私の後ろからついてくるという状態で、私たちは特に話すことも見当たらずに無言で森の中を進んでいた。

「もうすぐ、俺たちの住む巣が見えてくるよっ。頑張れ~っ!」

 森を十分ほど歩いた頃、私の背後を守るように歩いていた明るくて大きな声が励ましてくれる。

「……ありがとう」

「わあ、俺こんな風に素直に女の子にお礼言われたのって……なんか、生まれてから初めてかも」

 なんだか感動したように呟くから、私は振り返って彼を伺い見た。

 明るい声の持ち主の表情は暗くて良く分からない。けれど、明るい栗色の鳥の巣みたいなくしゃくしゃな髪が印象的な人だ……いや、違った。彼は人狼なんだっけ。

「……春。余計なことを、話すな。俺達が彼女に話すべきことではない」

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