まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
「無理もありません。同じ日本でもここは違う日本ですから。人狼の常識とは、違うでしょうね」
苦笑しつつ理人さんはそう言って、息をついた。
「……そうなんですね。私……匂いでわかっているとは思うんですけど、こういう事は初めてで。どうしていたら、良いですか?」
「……そうですね。先ずは口づけから、でしょうか?」
私は理人さんの形の良い唇を、じっと見た。彼は色素が薄いから、本当に綺麗なピンク色だ。
「えと、はい。どうぞ。してください」
彼の方を向いて、私は両目をぎゅっと閉じた。キスの時に目を開いているのはマナー違反と聞いたことがあるような気がする。なんだか、唇もふるふる震えてしまっているような気もするけど、気にしない。女は度胸だ。
この後はきっと、理人さんがどうにかしてくれる……はず!
自分の心臓の鼓動の音だけがやけに耳についてどくどくと聞こえる中、何か温かなものが頬に触れた。
くんくんと鼻を動かしている音がする。もしかして、何かの匂いが気になるんだろうか?
私は、ぱっと目を開いた。理人さんの透き通るようなグレーの目が間近にあって、慌てて移動してしまった。