まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
「えっと……生理って言えば、わかりますか? 私、まだ時期的に先だと思っていたから……ぜんぜん用意をしていなかったんです……」

 向こうの世界から持って来た荷物の中にもポーチに緊急用の生理用品が何枚か入っているだけ。どうしようと考えて、しゅんとしてしまった私に理人さんが優しく微笑んだ。

「大丈夫です。心配しないでくださいね。そういった女性に必要なものは、全部春に用意させています。すぐに持って来させます」

 そう言って理人さんは窓へと近寄り、がらりと音をさせて開けると静かな声で言った。

「春、緊急だ。戻ってこい」

「え?」

 とても静かな、声だった。すると数秒の間を置いた後で、オーーンと遠くから狼の遠吠えが聞こえる。

「すぐに帰るそうです……こういう時は体を温めた方が良いんでしたね。適当な膝掛けか何かを、探してきます」

 理人さんはそう言ってからサッと窓を閉め、軽い足取りで部屋を出て行った。

 あ、さっきの遠吠え、春くんなんだ。

 大きな獣耳をいつも目にしていたはずなのに、私が夫にした人達は本当に人狼なんだって、その時ようやく自覚をした。
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