まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 私は雄吾さんにしか見えない、元々は理人さんだろう人に何度も頷いた。本当にそっくりで……なんだか、特殊能力って言われても……ここが異世界ってわかっていても嘘みたい。

「じゃあ透子、行こう?」

 差し出された春くんの、大きくて温かな手を取った。ぎゅっと強めに握られた手は、確かな温かさを持って、異世界に来てわからないことばかりの私に安心感を与えてくれる。

「……結構数多い……な? まあ、俺たち相手にもしかしたら勝算があると思うくらいには、金が使える奴らしいな」

「全部を片付けるには、二時間くらいか……」

「りょーかい。それまで透子と二人きりか~……嬉しいな」

 廊下に出る前に、私は部屋に残った二人を振り返った。間違いなく二人は私を狙いに来た誰かを撃退するため、ここに残ったのだと思う。

「あのっ……気をつけて……」

 二人とも同じ顔なのにそれぞれ違う表情だったけど、笑ってくれた。

「さ。二人が敵を引きつけている内に、俺たちはお先に新しい巣に行こう」

「……あの……大丈夫かな?」

 私の心配顔を見て春くんは、からかうように指先で頬を撫でた。

「別に俺はここで透子を奪取するために来た刺客を、あの二人が蹴り散らすところを見てても良いよ? ただ……ちょっと女の子には、刺激が強いかもだけど」

「……ううん! 良い!」

 春くんは慌てた私に肩を竦めて見せて、ふふっと可愛い顔をして笑う。

「だよね? じゃあ、俺とデートしよ?」

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