君とふたりで。
「好きじゃないし」
言っておきながらも、緩む顔は隠しきれない。
だって男の人のアドレス、2つしか知らないんだもん。
お父さんと。
中学で同じバスケ部だった男子。それだけ。
だからこーやってメールするのはなんだか新鮮で──、
……はは。どんだけ悲しいの、あたし。
「咲良、発展したらすぐ教えてね★」
「チカもねー」
2人でニッコリ…いや、ニヤリと怪しい笑みを交わすと話を終えた。
その日の帰り。
「咲良〜♪」
香織と唯が嬉しそうに走ってきた。
「今日なんか用事あるー??」
「え…どして?」
「部活なくなってさ! 暇ならこれからカラオケでも行かない!?」
…どーしよう。
実は、今の今まで一紀さんとメールをしていて。
一緒に帰らない?って聞かれて…
小心者のあたしは断われなかったから、今日一緒に帰ることになったんだ。
でもそんなの言いにくい。
別に付き合ってるわけじゃないのに。
曖昧に返事をするあたしを見た2人は。