Cherry Blossoms〜偽りの絆〜
「ふぅ……」
ゆっくりと桜士は息を吐く。ようやく救急搬送された患者の処置がひと段落した。庄司も桜士の隣でどこかグッタリとしていた。
「ようやく終わったね〜」
「はい」
時計の針はお昼をとっくに過ぎている。今頃、一花たちは講演をしている時間だろう。そう思いながら時計を見ていた桜士に、庄司が再び声をかける。
「本田先生、お昼まだでしょ?先に行ってきて」
「えっ、でも黒田先生もまだですよね?」
桜士がそう訊ねると、年配の看護師が庄司の腕を掴み、ニコリと笑いかける。
「黒田先生は残っている仕事、一緒に片付けてもらうんですよ〜。本田先生、先に行ってください」
看護師のその笑みはどこか恐怖を感じるものだった。庄司の顔も心なしか青くなっている。
(一体、黒田先生は何をやらかしたんだ?)
寒気を感じつつ、桜士は食堂へと向かう。お昼時を過ぎた食堂は席がいくつも空いており、どこか静かだ。つけられているテレビの音声がうるさく思えてしまう。