春、忍ぶれど。
 彼の長い足だとすぐにベッド際まで辿り着いた。すぐそこのリビングから漏れる灯りだけで薄暗い寝室の中、二人。ベッドはこの家を借りた時の備え付けで一人で寝るには大きい。きっとラルフと一緒に眠ってもまだ余裕があると思えるほど。

 そっとシャロンをベッドに寝かせると、ぎしっと音を立ててラルフはその顔の両隣に手をついた。彼の端正なその顔が近づいてくる。

 その唇同士が触れるか触れないか、その瞬間、シャロンは言った。

「ラルフ、ずっと好きだったの。貴方が私を助けてくれた時から、ずっと」

「……あの時を覚えていてくれていたんだね。僕は……そのずっと前から、君のことを好きだったんだ」

 間近でその目に見つめられて、これは本当に良い夢だとそう思って、シャロンは目を閉じた。

< 23 / 41 >

この作品をシェア

pagetop