春、忍ぶれど。
「君の傍に居るよ。ずっと居させて。僕もここに住んでも良い?」

 そう言うと、頭を下げてシャロンの胸に耳を当てた。素肌の敏感な部分に彼の髪が当たってくすぐったくて、やっぱり笑ってしまう。後ろに寝転がると追いかけるようにラルフも体を倒し追いかけてきた。

「……そうだね。明日の朝も居たら、良いよ。でも、きっと夢だと思うの、もうこのまま目覚めたくないな……」

 なんとも現実味のない状況を噛み締めるように、シャロンはじっと天井を見ながらしみじみと言った。昨日まで話すことも出来ず遠くから見つめるだけだった人と今こうしてベッドを共にしている。本当に不思議で奇跡みたいな夢みたいだった。

 ラルフはじっとシャロンの高鳴っている鼓動を聞きながら、何かを考えているようだ。その頭を抱きしめると黒い髪の毛は思った通りの手触りだった。さらっとしていてまるで極上の絹糸のような感触にため息がこぼれてしまう。

「じゃあ、明日の朝僕がいたら……結婚してくれる?」

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