春、忍ぶれど。
「すっとずっとこの状況を夢見てきていたんだ。だからこれが現実であって欲しいと願っている。シャロンが僕のことを好きで、僕を受け入れてくれるなんて、そんなことがあるはずないとそう思っているんだ。もしこれが夢だとして、目覚めて一人だったらきっと死にたくなるくらい辛くなる」

 その大きな筋肉質の体はなんだか震えているようで、シャロンはどうにかしてあげたくて、たまらなくなって抱きしめた。彼の着ている服はいつも見かける時に着ている騎士服じゃない。そんな姿も新鮮だった、うすい灰色のシャツに頬を寄せるとその胸の鼓動はさっき聞いた時より早くなっているような気もする。

「私は……これは絶対夢だと思っているんだけど……けど、現実だと良いなって思ってる。起きて朝になってもラルフが居てくれたら良いなって思ってるの」

 頭の上に何か触れたような気がして、顔を上げるとラルフがシャロンの顔に何度もキスを落とした。執拗とも言える回数の、そのたくさんの軽いキスにくすぐったくて笑ってしまう。笑顔になったシャロンを見て、不安そうな顔をしていたラルフはやっと微笑んでくれた。

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