春、忍ぶれど。
 顔を上げて手の甲で口元を拭いながら、本当に不思議そうにラルフはシャロンを見た。その性欲なんてなさそうな、涼しそうな爽やかな顔を見てなんともいえない気持ちになる。こんなに快感を感じて乱れているのは自分だけなのかと恥ずかしくなって。

「もう……」

 その先を言えなくて、涙目で自分の膝を立てられた両足の間に居る彼を見つめた。出来たらこれだけで察して欲しいけれど、彼もはじめてという、そういう設定だったと思う。この夢の中は。だからして欲しいなら自分が言うしかないと思った。

「もう、いれて……」

 顔は熱くて真っ赤になっているだろうし恥ずかしくてたまらない。照れながらちいさく呟いたその言葉に、ラルフはびっくりしたのか、目を見開きそして笑って頷いた。もう全裸になっているシャロンに対して、彼は服を着たままだ。ゆっくりと灰色のシャツを脱ぐと、着痩せするのか思ったより筋肉のついたその大きな体に見惚れてしまう。そして黒いズボンと下着を一気に引き下ろし、彼自身を薄暗い部屋の冷たい空気に晒した。

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