春、忍ぶれど。

07(side Ralph)

 大好きなあの子の就職先が王城のお針子であると知れた時に、ラルフの就職先は決まった。

 本当は大きな騎士団がいくつかあるイルドギァの中でも、一番精鋭と言われている銀狼騎士団への入団許可も仮決定ではあるが出ていたが、一番戦いから遠くなるであろう王の騎士になるのに、躊躇いはなかった。とある貴族の三男坊であり血筋も良かったため、王族の警護の仕事が主な業務であり、不規則な勤務時間を余儀なくさせられる近衛騎士に配属となったのは、予想外ではあったがまあ仕方ない。

 彼女のすこしでも、傍に居られるならなんでも良かった。

 定時の城門は日勤の退勤時間であり、かなりごった返す。その中から、焦げ茶色のおさげ髪を揺らして帰っていく後ろ姿が見えた。そうして、ゆっくりとその頼りなくも見える細い後ろ姿の後を追う。

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