最強総長の愛するボディガード
今までの愛梨の言葉や表情、仕草が頭の中を駆け巡る。
でもそれが全て偽りだったと思うと、鳥肌が立って、その場から逃げ出さずにはいられなかった。



「はぁ……はぁ……はぁっ」



控えめで、おっとりとした愛梨の声とは真反対の、キンキンと響く声。
それが聞こえないところまで逃げなければ。
もう彼女とは、一緒にいられない。



その翌日から、俺は徹底的に愛梨を避けた。
向こうに待ち伏せをされていて顔を合わすことがあっても、俺は無視をし、その場を立ち去る。
そうまでするのは、彼女に会いたくなかったし、彼女の声を聞きたくなかったし、彼女に恐怖を抱いていたからだ。
どんな心を持っていれば、あんなことが出来る?
話しかけてくれたと喜んでいた俺が、馬鹿みたいだ。
彼女のことも俺自身のことも嫌悪して、そうして俺は無意識のうちに女性を避けるようになり、高校も男子校へ進学した。



俺が小学校四年生の時に会社を経営する両親が亡くなり、会社は副社長に任せ、俺はその業界でツテがあった蓮見家が所有するマンションへ住むことになった。
親戚に引き取ってもらうという選択肢もあったが、一人のほうが何かと気楽だと思ったのだ。
マンションへ住み始めてから気がついたのだが、ここには行き場を失った子供がたくさん住んでいるらしい。
だからか家賃もすごく安くて、こちらはとても助かっている。
そしてもう一つ、気がついたというより驚いたことだが、ここへ住んでいるものは、全員もれなく昏という暴走族へ入らなければならないということ。
と言っても悪事に手を染める訳ではなく、暴走族という形で街の治安を守るのが役目。
なぜそんなことをするのかと言うと、蓮見家当主の弥生さんに警察との関わりがあることが理由で、マンションに住まわせてもらう代わりに、といった感じだ。
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