来る日も来る日もXをして
「・・・菘先輩からは私もあんな風に見えてたんですね・・・。」

イベントが始まる直前だったが、美彩ちゃんが気分が悪くなってしまったので二人でキャンセルした。当日キャンセルなので参加費の返金はない。律儀な美彩ちゃんは私の分の参加費を出すと言ってくれたが丁重にお断りすると後日食事を奢ってくれることになった。

「もちろん、私と愛来ちゃんは全く同じというわけではないです。でも、忍くんとそういう関係だったことは確かですから。私、目が覚めてよかった。今は後悔してます・・・私、忍くんが初めてだったんです。好きになる前に軽い気持ちでしてしまった。」

「美彩ちゃん・・・。」

「愛来ちゃんは本命の相手が出来たら辞めるんでしょうし、他の子達も・・・忍くんも早くあんな関係辞めてくれたらいいなって思います。まぁ、忍くんが辞めたとして、私のところに来てくれるとは到底思えませんけど。」

美彩ちゃんは自虐的に笑った。

「あ~っ!むしょうにバッティングセンター行きたいです!先輩、今から行きません!?」

「・・・こ、この格好で?」

二人ともカジュアルなドレス姿だった。

「いいじゃないですか。逆に笑えますよ!あ、でも先輩お疲れだったんでしたっけ?」

「いや、私もバッティングセンター行きたい気分かも。行ったことないけど。」

「えぇ!行ったことないなんてもったいない!めっちゃスカッとしますよ!行きましょ!」

美彩ちゃんが腕を組んで来る。私は高校と大学が女子校だったこともあり、こういうノリは懐かしかった。

「よし、いっちょかっ飛ばすか!」

「おお!いいですね!」

美彩ちゃんが満面の笑顔になる。


バッティング中に今日欠勤していた東雲くんから着信があったけれど、カキーンと飛ばした時の爽快感ですっかり盛り上がっていた私はそれに気づくことはなく、そのままスマホの充電が切れ、着信に気づいたのは翌朝のことだった。
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