来る日も来る日もXをして
───こ、こんなとこでキス!?

パーテーションの向こうには上司含むたくさんの社員達が仕事をしていると言うのに。

更に明日先輩は私を抱きしめて『ごめん。』と耳元で言った。今にも泣きそうな声だった。

───な、何のこと!?

先輩が席に戻っても私はしばらく放心状態だった。そこへ電話が終わった男性社員が戻ってくる。

「あれ、更科ちゃんは?」

「おい更科、早く落ちた書類とれよ。ぼーっとすんな。」

明日先輩に言われ『は、はいっ!』と言った途端テーブルの天板に頭をぶつけてしまう。

男性社員が『大丈夫!?すげー音したよ!?』と言いながらテーブルの下を覗き込んでくる。一方明日先輩は覗き込んでくることはせず『何やってんだよ。どんくさいな。』などと悪態をついている。

「あ・・・ははは。大丈夫です。」

「ならよかった。あ、明日、今A社に電話して、来週の訪問の件なんだけどさ・・・。」

男性社員が体を戻して話し始めた途端、明日先輩がテーブルの下で私の頭を撫で始めた。

心地良くなってしまうがずっとそこにいるわけにもいかず席に戻って作業を開始する。

作業が終わり自席に戻ってから少し席を外し戻ってくると、デスクに頭を冷やせるアイテムが置かれていた。普段オフィスの冷凍庫に入れられているそれにタオルが巻かれている。その隣に和菓子と梅昆布茶の粉末も置かれていた。明日先輩が周りの目を忍んで置いてくれたのだろう。それを見てなんだか泣きそうになってしまい目を擦っていると向かいの席に座る愛来(あいら)ちゃんが戻ってきて『どうしたんですかぁ?』と声をかけてくれたので『花粉症で・・・。』とごまかした。


翌日、明日先輩と東雲くん、そして私が会議室に呼ばれた。目の前には固い表情の社長と部長。二人が話した内容に驚愕した私達はすぐには言葉を発することが出来なかった。
< 124 / 162 >

この作品をシェア

pagetop