来る日も来る日もXをして

目覚めと告白

高部さん(美彩ちゃん)には何もしてない』

東雲(しののめ)くんのその言葉を信じようと思う。彼はそういう嘘をつくことはしない人だと思うから。

「・・・ベッドに押し倒して屈辱的なことをたくさんさせようと思いました。僕のコト好きって言うし、僕の方には気持ちないって知ってるのに仮病使って早退するし、どんな恥ずかしいことでもするって言ってたくせに会社で全部脱げなかった分もお仕置きとして。でもいそいそと服を脱ぎ始めた彼女を見て『僕何やってるんだろう。』って思っちゃって・・・。」

「し、東雲くん、話はちゃんと聞くから離して・・・。」

『どこにでも行く』と言われたので、どこか話しやすいお店で、と言ったら東雲くんが指定してきたのはラグジュアリーな個室ダイニングだった。プライベートな時間を大切にする為に飲み物や料理は部屋の外のカウンターに置かれ、到着の音楽が流れたら入り口のドアの隣の小窓から自分達で取る仕組みだ。

部屋に入りソファに座って最初のドリンクを頼んだ途端、となりに座る東雲くんに抱きしめられた。

「・・・昨日だけじゃなくて、連日好きでもなく触れたいとも思わない女の子に、求められたからって触れてきた毎日が急に空虚なものに思えました。そうしたら自分の全部が空っぽみたいに思えてきて・・・消えてなくなりそうで怖くて・・・。」

すがるように私を抱きしめる東雲くんの声は泣きそうだった。

「そしたらむしょうに更科(さらしな)さんに会いたくなったんです。僕のところに来る女の子達は、僕の外見だとか住んでる家だとか僕のテクとかそんな表面的なものに群がっていただけ。でも更科さんは違う。ちゃんと僕の中身を見てくれてた。更科さんと一緒にいる時だけ自分が存在してたんだって気づいたんです。」
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