来る日も来る日もXをして

打たれたピリオド

明日(あけひ)先輩からの電話は『金曜日キスをしなかったけれど、昨日の土曜日子どもにならず大人のままでいられた。昨日だけたまたまそうだったのかと思ったら、日曜日の今日も大人でいられている。もう大人でいる為にキスをする必要はないのかもしれない。』という内容だった。

『・・・決められた期間が過ぎたのか、それとも何かの条件を満たしたのかはわからないけど・・・。』

淡々と話す明日先輩に『そうですか。よかったですね。』と返した私も淡々としていた。

───終わっちゃったんだ・・・。

元に戻ってよかったはずなのに、手の中で大切にしていた丸い何かが転がり落ちて大きな音を立てて割れてしまったような感覚に陥った。その粉々の破片すら空気に溶けて跡形もなく消えてなくなってしまったかのようだ。

気づいたらベッドで布団にくるまっていた。夕飯を作って食べたりお風呂に入った記憶がなかったのでキッチンやお風呂を見てみると使用した形跡があった。その夜眠ったのかそれとも眠らなかったのかもわからないくらいだった。先輩と来る日も来る日もキスをして過ごした日々は夢だったのかもしれないとすら思った。


不思議なもので会社に行ってももう明日先輩と偶然ふたりきりになるようなこともなく、先輩も私も海外行きの準備や仕事の引き継ぎの為に忙しい日々を過ごしていた。気を抜いたら全身を支配してしまう喪失感を紛らわすかのようにがむしゃらに働いていた。明日先輩の方からも何もなかった。


そして先輩が翌日()つという日・・・共に残業していた隣の島の女性社員が席を立ち『お先に失礼します。』と声をかけてくれたので『お疲れ様です。』と返す。明日先輩と私の声は重なっていた。

彼女が出ていくと久しぶりに先輩と二人きりになった。
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