来る日も来る日もXをして
四つ葉のクローバー探しを手伝った人に関してこれ以上想いを巡らせてほしくなかったし、サチさんのことが気になって『おばあさんは今お一人でフィンランドに?』と聞いてみる。

「うん。あっちに昔の友達もたくさんいるし、俺の両親も隣のスウェーデンにいてすぐ会えるから楽しそうだよ。俺を日本で育てたいっていう両親の希望の他に、ばあちゃん自身じいちゃんが死んで悲し過ぎてフィンランドを離れたっていうのもあったんだけど、時間が経つにつれて戻りたい気持ちが大きくなったみたいで、俺に連れてきてもらわなくても一人でフィンランド行けばよかったって言ってた。」

「よかったですね。」

サチさんの可愛らしい笑顔を思い出して心から幸せを願う。

「更科はどう?ハワイ店。」

「悩むことも多いですけど、なんとかやってます。想像していた以上に居心地のいいところで人も素敵だし。忍くんも頼もしいですし。」

「忍、って呼んでるんだ。」

明日先輩の声が少し硬くなったように感じるのは気のせいか。

「相方として一緒に仕事するようになって呼ぶことが増えて『しののめくん』って言いにくいし、いつの間にか・・・。」

「パーティーでも随分仲良さそうな感じだったけど、仕事以外でも相方になったの?」

「!?い、いえ!その、忍くんは私に気持ちを伝えてくれるんですけど、私はそういう風にはどうしても見れなくて申し訳なくて・・・。」

私に質問する明日先輩の目はなぜか鋭く光っていて、たじろいでしまった。けれど私の返答に対する先輩の『そっか。』という相づちは柔らかなもので安心する。

「・・・でも、いつかそうなれたらいいな、とは思ってます。」

その気持ちはまだ言葉にするには足りないくらいのほんの小さなものだったけれど、自分の明日先輩への気持ちに区切りをつける為に言葉にしたのだった。しかしその言葉に先輩が表情を変えた。廊下から狭い自販機コーナーに押し込まれ唇を奪われる。
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