来る日も来る日もXをして

ぬくもりデート

───むやみにイケメンだぁ・・・。

デニムにネイビーのコート、グリーン系のチェックのマフラー───初めて見た部屋着以外の明日(あけひ)先輩の私服は、ファストファッションブランドのものだった。

何か特別なファッションというわけでもないのに挨拶もせずに見とれてしまっていて我に返り『おはようございます。』と言おうとすると、先輩がこちらに熱い視線を注いでいることに気がついた。上から下まで何度も繰り返し視線を動かしている。

「あ、明日先輩?おはようございます。」

「!?お、おはよ・・・。」

先輩は慌てて私から視線を外した。

───やっぱりやり過ぎだったかなぁ・・・。

『小江戸』と言われる町並みを歩くのだから、着物とはいかないまでもこの場所に合う服装をしたいと思った。

美彩(みあや)ちゃんが『ナチュラルフェミニン』と言ってくれた私のオフィスファッションはあくまでも固い性格の自分を少しでも柔らかい雰囲気に見せられれば、と思って着ているものだ。個性的にならず、多くの人に好感を持たれることを基準に選んだ洋服達なのだ。

性格は変えたくてもなかなか変えられないし、頑固な髪の毛も思うような髪型にはなってくれないが、洋服ならば手軽になりたいイメージのアイテムを身に付けることができた。

でも本当は今日のようなクラシカルなファッョンが、品格を感じられ好きだった。

ノーカラーコートにエンパイアワンピース、コンパクトなポシェット、ベレー帽、大ぶりのアクセサリーにスカーフ、足元はダブルストラップのフラットシューズとメロウフリルのソックスだ。

「・・・似合ってるよ。」

「えっ・・・。」

「俺がよく見てる、昔の映画に出てくる女優みたい。エレガントでシックで、でも可愛い。真っ直ぐな黒髪とも合ってるし・・・。」

「そ、そんな風に言われると恥ずかしいですけど・・・ありがとうございます。」

頬と心を猫じゃらしでくすぐられているかのようにくすぐったい、そして体がカッカする。
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