暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「何をしているんだ?」

午前中からずっと会議で不在だった副社長が、定時を過ぎてやっと戻って来た時のびっくりした顔。

「ああ。すみません。お昼を食べ損ねてしまって」

このまま食べずに持って帰ろうかと思ったけれど、母さんが知れば悲しむだろうし、私自身もお腹が空いて勤務時間後のデスクでお弁当を広げた瞬間に声がかかってしまった。

「もうお昼って時間じゃないだろう?」
「それはそうですが・・・」
せっかく母が作ってくれた物を残すのももったいなくてとは言えなかった。

「食事もとらずに仕事をしろと言った覚えはないぞ」
デスクの上に積まれたファイルを見ながら、副社長が苦々しい顔をする。

「わかっています。始めたらとまらなくなってしまっただけです」

言い返すつもりで言ったのではない。
ただ事実を伝えただけ。もっと言うならば、私が勝手にしたことなのでお気になさらないでくださいの気持ちを込めたつもりだった。
しかし、

「いつまでも自由気ままリゾート気分で仕事をされても困るんだ。食事休憩は人並みな時間に取ってくれ」
「・・・はい」
その言い方に腹は立ったけれど、言い返すこともできず素直にうなずいた。

そもそもこんなに大量のマニュアルを今日中に見ておけと言ったのはあなただと言いたい。
見た目はリゾート帰りのイケイケ女子に見えるかもしれないけれど、それは外見だけだと叫びたい。
でも相手は直属の上司で、財閥の御曹司。その上お世話になった重さんの孫となれば、何も言えなかった。
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