暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「今夜空いているらしいが、どうする?」
「今日ですか?」

さすがに急だなとは思うけれど、忙しい副社長の予定を考えれば次がいつになるかわからない。
それにわざわざ聞いてくれたのだろうし・・・

「わかりました。今日でお願いします」

こうやって時々美味しい物を食べるのが、今の私の楽しみ。
副社長からすると世間の動向をとらえて事業展開のいいヒントになるになるのだそうだ。
半分仕事だからと理由を付けて、私も遠慮なく副社長に同行している。

「7時に予約するから、急な仕事を入れるなよ」
「それは副社長次第です」

私自身こんな風に遠慮なくものが言えるようになったのも、やはりあのパーティーの後からだろうか。
あの日、普段は人前で泣いたことなんてなかった私がなぜか泣いてしまい、副社長に慰められた。
ずっとずっと、人に甘えてはいけないと思って生きてきた私がはじめて寄り掛かった相手。それが創介副社長だった。
恥ずかしさもありその話題を避けている私に、副社長はあれきり何も言ってこない。

トントン。
「失礼します」
珍しく朝一で現れた谷口課長の、少し緊張気味な表情。

「私はコーヒーの用意をして参ります」

課長の硬い声から込み入った話があるのだろうと、私は部屋を出た。
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