薙野清香の【平安・現世】回顧録
「ねぇ、今度どこか遊びに行かない? 俺、奢るし。清香ちゃんが行きたいところに行こうよ。遊園地でも、水族館でも、どこでも好きなところに連れて行ってあげるよ」


 立花の言葉に、清香の心臓がギュっと収縮する。
 どうやら立花は、本気で清香と運命を感じているらしい。清香は必死で笑顔を取り繕ったが、いつものように、上手には笑えなかった。


「……遊園地は、ちょっと」


 あそこは既に、崇臣との思い出で染まっている。立花とこのまま関係を進めていくにしても、できればそのまま残していたい。


「じゃあ、水族館とかどうかな? 夏休みが終わるまでにさ」


 清香は曖昧に相槌を打ちながら、小さなため息を吐いた。


(相変わらず強引な男ね)


 そんなところだけ崇臣と立花は似通っている。
 なんと返答をしようか――――清香が迷っていたそのとき、来店を告げるベルが鳴り響いた。


「いらっしゃ……」

「やっほーー! お姉ちゃん、来たよ!」

「芹香! それに東條さんも」


 店の入り口に芹香と東條が並んで立っている。


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