薙野清香の【平安・現世】回顧録

4.

 そんな日々を重ねている内に、ダブルデートの日はあっという間に訪れた。


「まだかなぁーー東條君」


 芹香はソワソワしながら、何度も鏡を覗き込んでいる。

 遊園地という場所柄、何より動きやすい服装が好まれるだろう。そのため、清香も芹香も普段とは少しだけ趣の異なる服をチョイスしている。けれど、そんな中でも芹香は、清純で上品な印象を損なわない。
 化粧は迷いに迷った末、色付きのリップだけ塗っているのだが、それがまた意地らしく、清香の胸をときめかせる。化粧などせずとも、芹香は最高に可愛いのだ。


「約束の時間まで、まだもう少しあるから」


 清香はそう言って穏やかに笑った。

 今日は開園時間限界まで遊び回るつもりらしく、崇臣に車を出してもらうことになっていた。
 芹香は尚も待ちきれないらしく、ソワソワと身体を揺らしながら天井を見上げている。


「それは、そうなんだけどね」


 そう言って芹香が笑う。すると、タイミングよくスマホの着信音が鳴り響いた。


「あっ、東條君からメール!今、表に着いたってさ!」


 芹香はそう言って、勢いよくソファから立ち上がった。次いで清香も腰を上げる。


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