鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
思わずガバッと勢い良く顔を上げた私の顔を高い位置から見下ろしたイケメン客―じゃなくて上司は、

「西院静磨《さいおんしずま》。今日からお前の上司だ」

と、思わず腰にくるような美声で名乗った。
しかし、今の私にはそんな事で腰を抜かしている場合ではない。

この人が―この人が本社からやって来るっていう噂の上司?!

「想像と全然違う…」

「何か言ったか?」

「いえ、何も―」

思わずポロリとこぼれた言葉に鋭い視線を投げられ、慌てて両手を振って否定した。

想像と違いすぎるんですけど?!

予想では慇懃無礼で真面目な眼鏡上司とかだったのに、目の前に立つ上司―西院部長はその正反対だ。
まさか、こんな若くてイケメンが上司、それも部長職を熟しているなんて。
会社も小さいわけじやなく、社員数も本社になれば相当居るのだから、その中でだなんて相当優秀でキレるに違いない。

だけど、何でこんな所に居るんだろう?
部長がわざわざ現場へ来るなんて、忙しいだけになかなか無いことだと思うんだけど。

「まぁいい。これからお荷物のこの店舗。俺達で売り上げアップさせるぞ」

西院部長が両腕を組んで「返事」と言った。

「は、はいっ!頑張ります」

その威圧感満載の命令口調に、私は姿勢を正した。
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