ひと駅分の彼氏
反対に私は内気で、自分の気持を表現することが下手くそだ。


自分が泣いたり怒ったりすることで誰かに迷惑がかかる。


先にそう考えて自分の感情を二の次にしてしまう。


自分の感情を表に出しても嫌われたり迷惑がられることのない優花里は特別なのだと思う。


「ねぇ、本当に大丈夫?」


優花里と2人で中庭でお弁当を広げていると、心配そうに顔を覗き込まれてしまった。


「大丈夫だよ。優花里は少し心配しすぎだよ?」


「だって……」


優花里はそう言うと黙り込んでしまった。


なにか言いたいことがあるようだけれど、今はそれを押し込めているようだ。


自分の感情は放言しても、相手の心にズカズカと入り込むようなことはしない。


そこが優花里のすごいところだった。


「卵焼きもーらいっ!」


沈んでしまった優花里を見て、私はひときわ明るい声でそう言ってゆかりのお弁当箱から卵焼きを取って口に入れた。


「あ! 甘い卵焼き楽しみにしてたのに!」


「う~ん美味しい! 優花里のお母さんって料理の天才だよね!」


口いっぱいに甘くて美味しい卵焼きを頬張りながら、私は今朝の電車での出来事を何度も思い出していたのだった。
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