ひと駅分の彼氏
去年、冬
去年の冬はほんの2ヶ月前のことだ。


12月24日。


私は1人で自分の部屋で単語帳とにらめっこをしていた。


来年には本格的な大学受験が始まって、春には大学生生活を満喫している予定だ。


沢山のサークルに新しい友だち。


私の第一志望は教育学部で、将来の夢は幼稚園の先生になることだった。


そのためにピアノの勉強も始めた。


「あ~あ、クリスマスイブに勉強なんて……」


1時間ほど単語帳と格闘していた私はさすがに疲れて椅子に座ったまま大きく伸びをした。


机の上には辞書や大学入試の過去問題が乱雑に並び、およそクリスマスという雰囲気ではない。


気分転換に窓のカーテンを開いていみると、街中がネオンで輝いているのが見えた。


私の暮らしている家は丘の上に立っているので、景色がよく見えるのだ。


繁華街の方へ視線を向けるとひときわ大きな光が見える。


あそこにはクリスマスツリーが飾られているのだと、友人から聞いていた。
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