君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
その後、院長はジゼルに施設を案内してくれた。
先ほど聞いた話とは裏腹に、
施設の子たちは元気いっぱいで笑顔が眩しい。
(この子たちがここを旅立った後もこの笑顔を失わないでほしい。)
帰り際に、ジゼルは手土産に持ってきたマフィンを院長に渡して帰路に着いた。

「初めてのご訪問はいかがでしたか?」
「ちょっと考えさせられたわ。人間が生きていくって大変なのね。ハンナはどうやって侍女になれたの?」
「そうですね~侍女になるにも面接とか実技とかありますけど、大前提として伝手があるかどうかです。」
「働くには誰かの推薦が必要なの?」
「王城での仕事はお給金も高くて、求人が出るたびに争奪戦です。お城としても身元がはっきりした人を雇いたいですから、どれだけ大きなコネを手に入れられるかが重要ポイントなんですよ。」
(私があの子たちのコネになるのは肩入れしすぎかな・・・)
「まぁでも、それは第一関門にすぎません。自分の能力を示せるかがやはり最終的には大事です。逆に言えば、大したコネがなくても飛びぬけた資質を示せれば採用してもらえるのではないでしょうか。」
「ハンナ、それだわっ!」
ジゼルは思わず立ち上がる。

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