君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「女の子たちが手に職をつけられるようにサポートしてあげましょう。」
「でも誰が先生をするのですか?その方へのお給金も必要でしょうし。」
「とりあえずは私が先生をするわ。女の子たちが洋裁の技術を身に着けたら、お針子として就職出来るでしょう。」
綿花の栽培が盛んなユーフォルビアではお針子の職はいくらでもあったし、
マグノリア側の国境地域にも洋裁店が多いと聞いている。
「王妃様が先生をなさるのですか?」
「そうよ。私だったらユーフォルビア語だって教えられる。簡単なユーフォルビア語と確かな洋裁の技術があれば、悲しい思いをする女の子たちを減らせるはずよ。どこまでうまくできるか分からないけど、まずは自分でてきることからね。」
「王妃様が良いと思われることをするのが一番ですわ。」

早速ジゼルは次の修道院訪問のときに院長に考えを示した。
ジゼルの提案に院長も賛成してくれて、とりあえずやってみて改善点は都度修正していこうという話になった。
裁縫を教えるには最低でも針と糸と布が必要だ。
ジゼルはユリウスに相談し、
王城で廃棄予定だった大量の布と市場で針と糸を仕入れて、
ハンナたちと授業内容を考えたりしていると、
あんなに長く感じていた一日があっという間に過ぎ去っていく。

正直言って今まではお飾り王妃だったが、
今やっと王妃らしいことができそうだという気がしていた。
ルイーザたちの嫌がらせは相変わらずだったが、もう気にしない。
狭い王城で王の寵愛を競って何になるというのだ。
国民のために尽くしいつくしむことこそ私がやるべきことだ。
< 109 / 247 >

この作品をシェア

pagetop