君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「す、すごい。これが汽車というものなのね。馬車の何倍も速いわ。」
ジゼルは今、自分が乗車している乗り物に感動していた。

ウィステリア王国の海を越えた先にあるハイドランジア帝国。
この国で発明された汽車は海を越えてウィステリアにもたらされ、
国中に線路が延伸されているそうだ。
(こんな乗り物ユーフォルビアやマグノリアにはまだないわ。なんて素晴らしい技術力。)

エヴァンズは野営地から最も近い駅まで馬車で向かい、汽車の1等車を貸し切った。
王都ハートシードまでは汽車で向かうのだそう。
汽車は本来、貨物専用ではないかぎり動物は乗せないそうだが
特別にソテルも乗車させてくれた。
そしてこの汽車という乗り物は猛スピードで走っているにもかかわらず非常に快適だ。
椅子もふかふかで全然腰が痛くならない。
汽車の中で、エヴァンズはウィステリアの話をたくさんしてくれた。
ウィステリアにはジゼルが知らない不思議な機械がたくさんあるらしい。
特に機械で縫物ができる「ミシン」というものはぜひとも触ってみたいと思った。

ハートシードへの旅はあっという間で、
馬車だったら何日かかっていたのだろうという距離を数時間で到着してしまった。
街の様子もラデスフローやグラディオーレンとは全然違う。
エヴァンズはジゼルのためにできるだけ街の中を通るようなルートを使い、
ウィステリア王国を治めるボーセット家が住む城へと連れて行った。
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