君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「陛下、やっとひと段落しましたな。」
敗戦処理から軍の再編成、新政府づくりとやるべきことが多すぎて、
終わりが見えなかった日々もついにひと段落した。
「あぁ、なんとか形になった。ありがとう、じぃ。礼を言うよ。」
「いえいえ。陛下のためでしたら、私は何でもいたします。ただ・・・」
「どうした。言いたいことがあるなら言ってくれ。」
何かを言いたそうにしているシュトラウスにユリウスは優しく続きを促した。

「私ももう高齢です。陛下の役に立ちたいという気持ちはあっても、身体がついてこなくなりました。ここいらで家督を孫に譲り、引退を考えております。」
ユリウスは生まれた時から自分を側で支え続けてくれたシュトラウスを見つめる。
職務を離れて、領地で余生を過ごしてほしいというのはユリウスも常々思っていたことだったのだ。
老体に鞭打って働いてくれるシュトラウスにいつも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「私もじぃにはゆっくりしてほしいと思っていたんだ。本来なら私から言うべきところを、あなたが言い出すまで甘えてしまっていた。こちらこそすまない。長い間、本当にありがとう。」
ユリウスからの労いの言葉に、
深い皺が刻まれたシュトラウスの顔は一層しわくちゃになって、涙が頬を伝う。
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