君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
本来であれば、シュトラウスはユリウスが成人した時点で引退する予定だった。
しかし前国王夫妻が不慮の事故で突然崩御、
若くして即位することになったユリウスは王弟と王位継承をめぐって争わねばならなくなった。
その継承戦争の序盤で後継ぎだった息子が殺され、
ユリウスを支えられるのは自分しかいないと踏みとどまっていた。

しかし、もう時代は新しく変わろうとしている。
同世代のヴァルモーデン侯爵も軍の大将の地位を次の世代に譲ると宣言した。
幼かった孫のエルマーも既に成人して、今では自分の補佐を立派に務めてくれている。
ここいらが引き際だと、
シュトラウスは身を引く決心をしたのだった。

「ずっと考えていたことだったんだけどね、じぃ。この王城にじぃの彫像を設置しようかと思うんだ。」
ユリウスからの思わぬ提案にシュトラウスは驚きの声をあげる。
「何を言っているのですか!私のような文官の端くれにはそのような資格はございません。」
「王城に設置されている彫像は王族の私費で造られる。だから像を造るかどうかは私の一存で決まる。人生の全てを賭けて、私に仕えてくれたあなたの忠誠心に私ができる最大の名誉を与えたい。」
「そんな・・・そんな、陛下。私は自分がやるべきことをしたまでです。前国王にあなたの教育係を拝命いただいた時から、陛下を立派な国王にすることが私に与えられた使命なのだと思って。」
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