君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
ユリウスに会えないと寂しがるジゼルを可哀そうに思ったウィリアムが、
誕生日プレゼントとして電話をプレゼントしてくれた。
ハイドランジアでは徐々に普及していて、
上流家庭では一家に1台設置されているらしいが、
ウィステリアではまだ公的機関にしか設置されていない超高級品である。
当然、ジゼルだけが持っていても仕方ないので
ウィリアムはユリウスにもプレゼントする。

これはさすがに甘やかしすぎじゃないかとアリスが抗議したが、
「ジジは今まで辛い思いをたくさんしてきたんだから、これぐらいしてあげたい」
とウィリアムは一歩も譲らない。
「それにユリウス国王が電話を持ってくれていれば、今後外交上のやり取りがずいぶん楽になるから」
とウィリアムに説得されて、アリスも渋々了承したのだった。

週に何度か予定を合わせて電話することで、
2人は愛を確かめ合い、会えない寂しさを埋めていた。
低いけれど決して威圧的ではなく、穏やかなユリウスの声がジゼルは大好きだった。
公務で疲れているだろうに、いつだってジゼルの話を優しく聞いてくれる。
(結婚して王妃になったら、ユリウスの負担を少しでも軽くしてあげられるように頑張らなくちゃ。)
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