君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
式典開始時間まで1時間を切り、
儀典長と式次第について最終確認していると
控室の扉がコンコンとノックされた。
シュトラウスに確認に行かせると、
ユーフォルビアの使者が挨拶に来ているという。

(ユーフォルビアからは国王夫妻の代理で国王の従弟のフォンテーヌ公夫妻が出席だったはずだ。)
王族の冠婚葬祭ではよほどの友好国ではない限り、国王夫妻自らが出席することはなく、
大抵は王太子夫妻などを代理として遣わすのが慣例だ。
ギーゼラも久しぶりに親戚と会いたいだろうと思ったユリウスは入室を許可した。
「国王陛下、ジゼル王女殿下、この度はご結婚おめでとうございます。」
フォンテーヌ公夫妻はずいぶんと気さくで数分滞在した後に退出した。
だがジゼルの様子がおかしい。
親戚なのにフォンテーヌ公夫妻とほとんど会話をしないばかりか、目すら合わせようとしない。
不自然なくらいぎこちないのだ。
(やはりこの娘は王家の正式な娘ではないのか。)
ジゼルの花嫁姿に好感を覚えたユリウスだったが、ジゼルの態度を見て最初に抱いた疑念を強めてしまった。
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