君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
「素敵!馬が好きってことは、乗馬とかも得意よね?騎士団にいるのだし。」
「えぇ。実家には小さな厩舎があって、子供の頃から馬に乗っていました。」
「ねぇねぇ、私にも乗馬を教えてちょうだいな。」
「王妃様、滅相もありません。とてもじゃないですが、お受けできません。落馬でもして王妃様にもしものことがあったら、私の命がいくつあっても足りませんから。」
「ほんのちょっとでいいの。別に軍馬に乗りたいわけじゃないわ。ポニーっていうのかしら、小さいお馬に乗って少し散歩出来たらそれでいいの。」
何度否定してもジゼルが食い下がるので、根負けしたクララは「陛下のお許しが出れば」という条件付きで承諾した。
「自分の人生で馬に乗れる日が来るなんて、ワクワクしちゃう。ありがとう、クララ。」
満面の笑みでお礼を言われるとクララだって悪い気はしない。

「とりあえず乗馬の件はおいといて、王妃様のモチーフを決めましょう。」
「そうね、そうだったわね。」
気を取り直して本に目を通すと、あるページでふと目が留まった。
それは猫に関する記述だった。
猫は古代の神話にも登場し、「災いを退け、福を呼ぶ」動物とされているらしい。
遠い東の国では、手招きする猫は金運をもたらすとされているそうだ。
グリシーヌ宮には野良猫が姿を見せることがあり、ジゼル自身も猫は好きな動物だった。
(私にも福を呼んでくれますように・・・)
いろいろと迷った末に、自分のモチーフを猫に決定したジゼルであった。
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