甘すぎる小悪魔に見つかったなら。
ひっくり返った声を誤魔化すように,こほんと咳払いをする。

十和はそんな私をじっと見て,それに戦いた私にまたにこり。



「用なんてないよ? ただ,ほら……僕って友達いないから。あゆに会いに来ちゃった」



きゃっと沸く観客が,いい加減騒がしい。

ピキリと青筋立てた私は,ほんの少し高い十和の瞳を見上げた。

~っ嘘おっしゃい!

昨日散々もーちゃんに聞かされたんだもん,色んな人に好かれてて,数人得に仲のいい友達もいるんでしょ!

出掛けた言葉が喉にかかる。

そして私は反対に目を泳がせた。



「えーと?」



誰かが噂したんだろうか。

友達がいないと言うフレーズには,心当たりしかない。

……それで怒ってここまで来たってこと?!

十和……

心狭いよ,とは言えない。

自分が蒔いた種だ。

ケンカ売った用なもの。



「ごっ……」

「いいよ,謝んなくて。ちょっとからかっただけだから」



意図的に? 潜められた声に囁かれる。

からかわれたのか……

ガクリと,言葉を遮られた私は肩を落とす。

もうやだこの子,私これでも先輩なのに……

ふわふわコロコロと,どうにも遊ばれている気がしてならない。
< 17 / 65 >

この作品をシェア

pagetop