とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
「姉さん、意地になってない? 家族に対してそんなに反抗したいの?」


私は、泣きながら姉さんに言った。


「何よそれ、バカなこと言わないで!」


「私はね。涼香姉さんには幸せになってもらいたい、本当だよ。だけど、綾井店長にも、龍聖君にも近寄らないで。私には私の生活がある。涼香姉さんが家族を大切に思えないなら、もう私のことに干渉しないで」


大切にしたいのに……


こんなこと言いたくないのに……


でも、これ以上自由にされたら私、おかしくなってしまいそうで。


「ひどいこと言うのね。家族だから幸せを願うなんて、どうせ口からでまかせでしょ? 私のこと、パパと同じようにあなたも嫌いなんでしょ?」


「パパが姉さんのこと嫌いなわけないじゃない」


私だって、嫌いなんて思えないんだよ。


それは姉さんに出会ってから、1度も変わらない気持ち。


「もういいわ! 帰る」


今は少し頭を冷やしたい、だから止めない。


許して……


ドアがバタンと閉まり、カツカツとハイヒールの音が消えていった……


姉さんが帰った後のテーブル。


数切れだけ残されたピザが虚しかった。


窓から見下ろすと、濡れた服が乾かないうちに出ていった姉さんが、タクシーに乗り込む姿が見えた。


私、いったいどうすれば良かったんだろう……


ようやく1人になれたのに、今日はもう、ビデオを観たり、クッキーを焼く気分ではなくなってしまった。
< 105 / 276 >

この作品をシェア

pagetop