とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
好きだからこそ~俊哉side~
「俊哉さん」


「あなたは……」


仕事が一段落し、店を出たところに見覚えのある派手な女性が立っていた。


「少しお話できます?」


「あっ、ええ」


「喉が渇いてるの、お茶したいわ」


「わかりました。近くのレストランに行きましょう」


ドアをあけると、躊躇なく僕の車に乗り込んだその女性。


桜木 琴音ちゃんのお姉さん。


確か、涼香さんだったか。


いったい僕に何の用なのか。


あれから琴音ちゃんとは深い話はできていない、もしかして涼香さんから彼女について何か聞けるかも知れない……その思いだけでつい誘いを受けてしまった。


「ああ、美味しいわ。やっぱりビールが最高ですね」


レストランに入って、すぐにビールを注文し、一気に飲み干した後、


「もう1杯頼んでいいかしら? あと、お腹も少し空いてるの」


と、メニューを見始めた。


「どうぞ」


僕はそう言いながら、早く琴音ちゃんの話を聞きたい……と心の中でつぶやいた。
< 172 / 276 >

この作品をシェア

pagetop