とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
家族の本当の思い
日本以外の「ホテル リベルテ」の経営に携わるため、私達はしばらく海外で暮らすことになった。


お父様は、早く龍聖君に社長の椅子を譲りたいみたいで……


今回はそのための大切な修行だと、龍聖君が話していた。


向こうには鳳条グループの所有する別荘があり、写真で見たら、それはまるでハリウッドセレブが暮らす豪邸のようだった。


まさかそんな素敵なお家が新居になるなんて、嘘みたいだ。


日本を離れるのはすごく寂しいけど、龍聖君の側にいたい気持ちは曲げられない。


私は、仕事も辞め、碧や仲間のみんなともお別れをして、最後に両親の暮らす実家に向かった。


お父さんがどうしても会いたいって言ってくれて。


数年後には日本に戻ってくるものの、旅立つ前に私も両親には会っておきたかった。


実家に着くと、まず最初に敷地内にある桜の木に目がいった。


桜の花びらは全部散って、今はただの「木」になってる。


それでも私にとっては思い出のいっぱい詰まった大切な「木」だ。


「ただいま」


そう小さくつぶやいたら「おかえり」って、私を温かく迎えてくれてる気がした。


お願いだから、この先も……どうかお父さんお母さんを見守っててね。
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