ROCKな人魚姫《前編》
溜まり場「喫煙所」

「あのっ。入部したいんですけどっ」


次の日、迷わずあたしはバンドサークルの部室へと向かった。


見た目は怖そうなお兄さんが3人。

大丈夫。

バンドやってる人に悪い人はいない。



「じゃあ、ここに名前書いて。」

机に置いてあった紙を指差し、そう言った。

その紙に目をやると、すでに数人の名前が書かれており、1年生がもう何人か入部しているということが伺えた。

その名簿の一番下にあたしの名前を書く。


部室にいた先輩たちは何も言葉を発しない。

視線は、あたしの鉛筆の先に集中しているようで、自分の名前を書くだけなのに、とても緊張してしまい、みみずみたいな文字が出来上がった。


それを見届けると、先輩はようやく口を開いた。


「毎週月曜日の昼休みに喫煙所の前でミーティングやってるから、サークルの詳細はそんとき話すから。」


「あっ。はい。よろしくお願いします。」


頭を下げながらそう言って、ささっと部室を後にした。


< 18 / 202 >

この作品をシェア

pagetop