好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。

11.全てを失うぐらいなら(2章最終話)

 レヴィの心臓がドクンドクンと鳴り響く。
 扉の向こうには今、ずっと渇望していた存在――――アリスが居る。ほんの数ヶ月の間に痩せ細り、今にも崩れ落ちそうなアリスが。そう思ったその瞬間、レヴィの胸が強く軋んだ。


(早く……早くお嬢様を部屋に戻さなければ)


 先ほどの様子を鑑みるに、立っているのもやっとだろう。
 前回とは全く違う理由で、レヴィはアリスを帰そうと誓う。


「お嬢様、早くお部屋にお戻りにならないと、お身体が……」

「心配させてごめんなさい。私は大丈夫よ。
それに、ドアを開けてくれなくても良いの。私、レヴィに話を聞いてほしかっただけだから」


 すぐに弱々しい答えが返ってきた。けれど、レヴィにはとても大丈夫なようには聞こえない。心配だった。アリスのことが、あまりにも。


(しかし……)


 今はアリスが望むなら、どんな願いでも叶えてやりたい。
 しばらく迷った末、レヴィは「承知しました」と答えた。


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