幼馴染みの秘めた溺愛  ~お前は女神でヒーローで
それから10分くらいしてから降りてきた樹王と、ちゃぶ台を囲む。

「いただきます」
「どうぞ召し上がれ」


よし、謝るなら早い内だね。
「あの…さっきはごめん」

「ブフッ!…お前…普通女はそーゆーの触れなくない?」

「普通じゃないもん、あたし」


…なんてやや気まずい空気をテレビをつけて濁し、また普段の様に話しながら夕飯を終えた。


台所から缶チューハイを二つ持ってちゃぶ台へ戻る。

「飲む?」
「おう、さんきゅ」

「「おつかれ」」カツン
とお互いに労う乾杯もいつもの事。

「おばちゃん、元気?」
「まぁぼちぼち。美桜の母ちゃんと離れてるのがつまんねぇみたいだな」
「そっか、いつもの話し相手がいないもんね」


「なぁ、美桜は彼氏作らねぇの?」

…いきなり珍しい質問が飛んできた。

「…いた方がいいの?」

「いや、いなくていいけど。ただ勿体なくね?こんなんでもお前美人だしさ」

「こんなので悪かったわねー」

「美人だって褒めてるじゃん」

「ハイハイお世辞でもありがたく頂いとくー」
なんて、ほんとはお世辞でも舞い上がるくらい嬉しいんだけど。

「だからお世辞じゃねえよ」

「それより樹王こそどうなのよ。イケメン消防士さんなら選び放題でしょ」

なんて…聞きたくないけど聞いておきたい微妙な乙女心。


「面倒でしかねぇ」

「じゃあ何で合コン行くの?」

「全部付き合い。断れないのだけな」

「ふぅん…でも生身の女としたくないの?」

「ぶほっ!…だから何で…ってまぁそーゆー系の漫画描いてるしな、言うことに抵抗ねぇか」

「きっと男も嫌でしょ、こんな可愛げのない女なんて」
それは分かってるし。

「…お前は可愛いよ」


びっくりして目が飛び出るかと思った。
「樹王、酔って…ないよね」

「こんなんで酔うか」

「そうだけど…だって変なこと言うから」

「俺がお前を可愛いっつったら変?」

「…変でしょ」嬉しいけど。

「ふ、可愛くねぇな」

「わかってる」

だって…可愛かったらとっくの昔に素直に気持ち伝えてるってば…
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